2009年11月10日

晩秋

畑の土を掘り起こせり
縮んだ大根
腐ったうす赤きトマト
キャベツの芯
我は死せる命を葬れり

土深く眠る幼虫を起こし
畑に迷いし季節はずれのスミレを掘り
イチゴのつる伸びてすでに地に根を張るを絶つ
憐憫の情が次々に生まれる
ああ 小さきものは脈々と生きたり

ラベンダーの花びらがこぼれるごとく
ぽろぽろと黒土に涙を落とし
我は鍬で憐みを掘る

憐みをもらいて生きる己を思う
ああ 胸痛し。

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2009年11月08日

彷徨

我が魂は去れり
息絶えて去れり
どこを彷徨(さまよ)いしか
我消えなんとするも
出口は見えず

おぼつかなき足
ついに折れ
倒れなんとすれど
大地は許さじ
大地は我を受け止めず

まだ歩け
まだ歩け
隊はどこまでもゆく
この霧の中に消えなんとすれど
願い叶わず

我ユダヤ人の足となり
地を這い彷徨(さまよ)う
魂なき命引きずり―

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2009年11月07日

孤独の星

星が瞬いている
孤独のために
チカチカと音もなく
きれいな夜空にひとつ
おまえたちを想い―

寂しさはどこからやってくるのだろう
木枯らしが吹くよ
星が揺れ
寂しさがふわりとぼくらにかぶる
決して悲しいのじゃない

言霊の夜
沈黙する魚たちのように
目を見張った
それは荘厳で美しい瞬間
ぼくらは痛みを忘れた
胸のつまるような心の痛みを

静かに冴えわたる野原に
夜空を見にきてごらん
星はみなおまえたちのために
瞬いているから
孤独のおまえたちに代わって
瞬いているから

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残したもの

家畜の群れのように
阿鼻叫喚する世の中から
遠ざかる
私は守られた部屋の中で
ひそやかに息づく

心すさみ
囚われ人さながらに
執着と執念のはざまで
右往左往した
苦悶の末

被服を脱ぎ捨て
裸になった
幾年もかけて
持てるはことばだけになった

持たざる生活の
潔さよ
手元に光る一粒の
輝きよ
私は名もなき幸福に目を閉じる
それでよいのだ。

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2009年11月05日

いのちの歌

海辺のほら貝のように
捨てられたいのちを
君は拾った
邪険にされた
ぼくらの声を聞くため
その笛で
散り散りになったぼくらを呼ぶ

ほら貝がざわめく
波の音
遠い日の記憶 
海に散った魂
散り散りになったぼくらに
ほら貝が吹き鳴らす

されば今
ぼくらは集結する
ほら貝の音色にあわせ
いのちの歌を合唱する:

生きていれば
生きてさえいれば
ああ
ぼくらにはまだ任務がある

生きていれば
生きてさえいれば
ああ
ぼくらにはまだ未来がある

弱き者たちよ
集結せよ
力を合わせ決起せよ。

posted by 野々花 at 19:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年11月04日

死んだ魚のように
声が出ない
身動きをしない
ぼくらは生きながら
黄泉へ行く

悲しみでいっぱいのぼくらは
声が出ない
身動きをしない
押し黙って瞬いている
星のように

声の出ないぼくらは
チカチカと信号を送る
君に声なき声を送る

君の言う :
生きてさえいれば
生きてさえいればいつかきっと
そして息をせよ
永劫に呼吸して
非常信号を送り続けよ。

posted by 野々花 at 17:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年11月02日

初雪

初雪の
朝日を浴びて
さらさら解けゆく
朝霧草にきらりと光る
露は涙に似たり

晩秋の光
柔らかく地表に届き
消え入りなんとする
われをなぐさむ
われをなぐさむ 

花びらの散るごとき
雪よ
はかなき天よ
この病者の心を優しく撫でたまえ―

posted by 野々花 at 17:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年11月01日

無感覚

何も心を打ちません。
感覚が麻痺したような
ものを受けつけることを止めたような
無感覚なのです。
よく言えば平穏無事。
いや、脳が疲労に耐えかねて
非常警報を鳴らしている
それが聞こえないだけかもしれません。
聞こえるべきものが聞こえない。
そばに寄り添う自然もない。
私の方から離れていっているような
世界の表面がぼこぼことしていることを
あまり皮膚で感じられないのです。
私は疲れているのでしょうか。
眠れば眠るほど
無感覚が増していくようです。
私の感覚器が麻痺しているならば
その間に世界だけが雲のように動いていくのであれば
私は悲しい。
非常警報が聞こえない。
どこにも何も見当たらない。

posted by 野々花 at 10:51 | Comment(2) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年10月30日

寂寥

薄暮の頃
無言で床に臥す
ひとりの病身の女
宙を見つめ
この世にいくつの寂寥があるだろうと
考えながら。

寂しいと口にしなくても
いつも後からついてくる。
そして歳月ばかりが川のように流れゆく
女を連れて。

寂寥は病身の性なのだ
ただ世を忍び
やり過ごすという
弱き者たちの集いの場なのだ。

寂寥よ
落日とともに落ちゆけ
病者にこれ以上の悲しみは要らぬ。

posted by 野々花 at 14:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年10月28日

老いたる母の柔らかな笑顔見たり。
精神を病んだ娘と並び
写真にぱちりと納まった
あどけない笑顔。
その肩にいかばかりの重荷を背負ったろう。
いかばかりの嵐の夜を耐えたろう。
母よ
娘を守り続けたあなたは今
安堵して小さく笑う
闘い抜いた末にかわいく笑う
母よ
安らかにあり給え。
父のふところに抱かれ
子のように嬉々としてあり給え。
強かりし母よ
優しいまなざしの先に
希望携えるあなたの娘がいる。

posted by 野々花 at 11:31 | Comment(4) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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