2009年11月24日

老い

老いの足取りが聞こえる
ひたひた走る足取りが聞こえる
その音に気づきはっと目が覚めた
それは私の足音だった
そこはかとない不安が伝播する
すえた孤独の臭い
凍れる菊
しだいに暮れゆく日の光は弱く
生き物の気配はどこにもあらず
私は旅に出るように
老いるための仕度をする
しだいに暗くなる冬空の下で
生き物の在り処を求め歩く
生涯の灯りをともす
侘しさの中に消え入らぬよう 
自らの手でともす
来るべきその時を迎えるまで―

posted by 野々花 at 11:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年11月22日

希望

鈍色の低い空
震える電線 
いのちの眠る灰色の季節に
私は生命の声を聞く

私治りたいの
そして学びたいの

固く意志を結ぶ母の手を握る

私治りたいの

好奇心に満ちた瞳
老いたる母には未来がある

苦しみを乗り越えた明るさよ
あなたは老いの侘しさを超え
自分で自分の未来をつくる

私治りたいの―

posted by 野々花 at 21:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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痛み

ぼくらは皆痛んでいる
慈しみ合うことを知っている
ことばを持たぬぼくらには
互いを想う気持ちが痛い

透き通った心を持っている
柔らかい温かな皮膚をしている
傷つき痛みを感じるために

憐れみ
気遣い
労わりながら
ぼくらはそっと傷をなめ合う
愛し
寄り添い
温情溢れ
差し伸べる手が震えている

ああ 誰かぼくらの涙を拭いて―

posted by 野々花 at 07:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年11月20日

想像の共同体

温かな幸福に包まれている
緩んだ肉体は武装を知らず
他との境界を持たない

隣り合うすべてが皮膚に優しく
私に向かって語りかける
本当はみな寄り添っているのだ

想像の共同体が私をつなぐ
息づくものたちの宇宙をつなぐ
目に見えぬ命の微弱な連帯

私はもう孤独を知らない―

posted by 野々花 at 16:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年11月19日

祈りの森

深い深い祈りの森で
私はひっそりと祈る
あらゆるものはすぐ隣にあり
どこにも境はない

満たされた肉体が
柔らかに息づいている
すべては調和し
優しさを身にまとう

私は母になる
万物が飛び立ち
万物が帰れるように
静かに待つ

祈りの森で―

posted by 野々花 at 14:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年11月17日

非力な者

食べるものがあり
暖かな暖房があり
帰る家がある
それが有り難く
震えながらひっそりと祈る

添う人があり
包む人があり
手を携える人がある
それが有り難く
震えながらひっそりと祈る

当たり前のことが
当たり前にない世の中で
偶然に翻弄される
祈るしかないわたくしは
非力に過ぎる

生き延びんという名の大海に
藁にもすがる人々は数多
ともに浮かぶわたくしには
まだ帰る家がある

運命に慄いて
祈り、憤り、また祈る
この非力な者の哀れみよ―

posted by 野々花 at 08:38 | Comment(2) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年11月16日

闘病

嵐止む
澄んだ青空に
ひばり鳴き
君の朗々とした声に
ぼくは健康を取り戻す

奇跡の瞬間(とき)
ぼくは笑う
しっかりとした手で
君の手を握り締める
ぼくの心は明朗になる

轟々となる嵐去るたび
何度でも繰り返し君に出会う
その瞬間(とき)を待つ
いのちある限り―

posted by 野々花 at 08:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年11月14日

あなたの目は小鹿のまなざし
あなたの口もとは貴公子の微笑み
行ってきますと
私をそっと抱きしめる
あなたは柔らかな朝の光

私の洗った衣服をまとい
私の作ったおにぎりを持って
外へ出てゆくあなた
ふたり
すっかり夫婦になりましたね

いってらっしゃい
行ってきます
いってらっしゃい
行ってきます

朝日の昇るように
繰り返し日々を紡ぎ―

posted by 野々花 at 09:32 | Comment(2) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年11月11日

いのちの日記

ラベンダーの花びら
黒土に零れるごとく
ぽろぽろと涙を流し
息だけをしている
生ぬるい己を憂う
外を見やれば
みぞれ降る大地に
なお生きるものたちがある
青々と茂るイチゴ
凛と咲くカスミソウ
新芽を伸ばすミニバラ
私は小さき者たちに驚嘆し
眼(まなこ)を開いてまざまざと見る
そしていのちの日記をつける
やってくる孤独の季節を凌ぐため―

posted by 野々花 at 09:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年11月10日

晩秋

畑の土を掘り起こせり
縮んだ大根
腐ったうす赤きトマト
キャベツの芯
我は死せる命を葬れり

土深く眠る幼虫を起こし
畑に迷いし季節はずれのスミレを掘り
イチゴのつる伸びてすでに地に根を張るを絶つ
憐憫の情が次々に生まれる
ああ 小さきものは脈々と生きたり

ラベンダーの花びらがこぼれるごとく
ぽろぽろと黒土に涙を落とし
我は鍬で憐みを掘る

憐みをもらいて生きる己を思う
ああ 胸痛し。

posted by 野々花 at 15:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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