畑の土を掘り起こせり
縮んだ大根
腐ったうす赤きトマト
キャベツの芯
我は死せる命を葬れり
土深く眠る幼虫を起こし
畑に迷いし季節はずれのスミレを掘り
イチゴのつる伸びてすでに地に根を張るを絶つ
憐憫の情が次々に生まれる
ああ 小さきものは脈々と生きたり
ラベンダーの花びらがこぼれるごとく
ぽろぽろと黒土に涙を落とし
我は鍬で憐みを掘る
憐みをもらいて生きる己を思う
ああ 胸痛し。
畑の土を掘り起こせり
縮んだ大根
腐ったうす赤きトマト
キャベツの芯
我は死せる命を葬れり
土深く眠る幼虫を起こし
畑に迷いし季節はずれのスミレを掘り
イチゴのつる伸びてすでに地に根を張るを絶つ
憐憫の情が次々に生まれる
ああ 小さきものは脈々と生きたり
ラベンダーの花びらがこぼれるごとく
ぽろぽろと黒土に涙を落とし
我は鍬で憐みを掘る
憐みをもらいて生きる己を思う
ああ 胸痛し。
我が魂は去れり
息絶えて去れり
どこを彷徨(さまよ)いしか
我消えなんとするも
出口は見えず
おぼつかなき足
ついに折れ
倒れなんとすれど
大地は許さじ
大地は我を受け止めず
まだ歩け
まだ歩け
隊はどこまでもゆく
この霧の中に消えなんとすれど
願い叶わず
我ユダヤ人の足となり
地を這い彷徨(さまよ)う
魂なき命引きずり―
星が瞬いている
孤独のために
チカチカと音もなく
きれいな夜空にひとつ
おまえたちを想い―
寂しさはどこからやってくるのだろう
木枯らしが吹くよ
星が揺れ
寂しさがふわりとぼくらにかぶる
決して悲しいのじゃない
言霊の夜
沈黙する魚たちのように
目を見張った
それは荘厳で美しい瞬間
ぼくらは痛みを忘れた
胸のつまるような心の痛みを
静かに冴えわたる野原に
夜空を見にきてごらん
星はみなおまえたちのために
瞬いているから
孤独のおまえたちに代わって
瞬いているから
家畜の群れのように
阿鼻叫喚する世の中から
遠ざかる
私は守られた部屋の中で
ひそやかに息づく
心すさみ
囚われ人さながらに
執着と執念のはざまで
右往左往した
苦悶の末
被服を脱ぎ捨て
裸になった
幾年もかけて
持てるはことばだけになった
持たざる生活の
潔さよ
手元に光る一粒の
輝きよ
私は名もなき幸福に目を閉じる
それでよいのだ。
海辺のほら貝のように
捨てられたいのちを
君は拾った
邪険にされた
ぼくらの声を聞くため
その笛で
散り散りになったぼくらを呼ぶ
ほら貝がざわめく
波の音
遠い日の記憶
海に散った魂
散り散りになったぼくらに
ほら貝が吹き鳴らす
されば今
ぼくらは集結する
ほら貝の音色にあわせ
いのちの歌を合唱する:
生きていれば
生きてさえいれば
ああ
ぼくらにはまだ任務がある
生きていれば
生きてさえいれば
ああ
ぼくらにはまだ未来がある
弱き者たちよ
集結せよ
力を合わせ決起せよ。
死んだ魚のように
声が出ない
身動きをしない
ぼくらは生きながら
黄泉へ行く
悲しみでいっぱいのぼくらは
声が出ない
身動きをしない
押し黙って瞬いている
星のように
声の出ないぼくらは
チカチカと信号を送る
君に声なき声を送る
君の言う :
生きてさえいれば
生きてさえいればいつかきっと
そして息をせよ
永劫に呼吸して
非常信号を送り続けよ。
初雪の
朝日を浴びて
さらさら解けゆく
朝霧草にきらりと光る
露は涙に似たり
晩秋の光
柔らかく地表に届き
消え入りなんとする
われをなぐさむ
われをなぐさむ
花びらの散るごとき
雪よ
はかなき天よ
この病者の心を優しく撫でたまえ―
何も心を打ちません。
感覚が麻痺したような
ものを受けつけることを止めたような
無感覚なのです。
よく言えば平穏無事。
いや、脳が疲労に耐えかねて
非常警報を鳴らしている
それが聞こえないだけかもしれません。
聞こえるべきものが聞こえない。
そばに寄り添う自然もない。
私の方から離れていっているような
世界の表面がぼこぼことしていることを
あまり皮膚で感じられないのです。
私は疲れているのでしょうか。
眠れば眠るほど
無感覚が増していくようです。
私の感覚器が麻痺しているならば
その間に世界だけが雲のように動いていくのであれば
私は悲しい。
非常警報が聞こえない。
どこにも何も見当たらない。
薄暮の頃
無言で床に臥す
ひとりの病身の女
宙を見つめ
この世にいくつの寂寥があるだろうと
考えながら。
寂しいと口にしなくても
いつも後からついてくる。
そして歳月ばかりが川のように流れゆく
女を連れて。
寂寥は病身の性なのだ
ただ世を忍び
やり過ごすという
弱き者たちの集いの場なのだ。
寂寥よ
落日とともに落ちゆけ
病者にこれ以上の悲しみは要らぬ。
老いたる母の柔らかな笑顔見たり。
精神を病んだ娘と並び
写真にぱちりと納まった
あどけない笑顔。
その肩にいかばかりの重荷を背負ったろう。
いかばかりの嵐の夜を耐えたろう。
母よ
娘を守り続けたあなたは今
安堵して小さく笑う
闘い抜いた末にかわいく笑う
母よ
安らかにあり給え。
父のふところに抱かれ
子のように嬉々としてあり給え。
強かりし母よ
優しいまなざしの先に
希望携えるあなたの娘がいる。

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