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2011年03月21日

被災者に捧ぐ(3)

立ちつくす者たちへ

瓦礫のあいだにしゃがみ込み
はじめて一片の石くずを拾う

拾っては積み 積んでは拾う
無残な姿に成り果てた何ものかの断片を

何ものでもなくなったおまえに
わたしは語りかける

かすかな面影は過去へ押しやり
新たな時代の礎となれ
ただの一片の石くずとして
未来を造れ

崩れ去ったものに涙はかけない
これははじまりなのだから

春の歌を歌おう
生き残った者たちの息吹を讃えよう
今は先に光がなくとも
手を携えることが希望なのだ

★『吉川千穂詩集 再生』は、闘病生活から生まれた詩集です。
http://www16.plala.or.jp/ychiho/advertisement.html

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2011年03月13日

被災者に捧ぐ(2)

ことばの力を信じ、今の私にできることをします。詩を載せます。被災者の心に届きますように。

いのちの防人

私たちの空はもう白んでいる

疲労と絶望の下で求めている
生存の可能性を探っている

夜が明けてなお呼び合う人々の声
濁流に呑み込まれた子を捜す眼

どこへ逃げれば
何をめざせば
方位磁石は回転したまま

風の中へ
身を切る風の中へ
私たちはいのちの防人となって歩む

今後ろを振り返ってはならない

★『吉川千穂詩集 再生』は、闘病生活から生まれた詩集です。
http://www16.plala.or.jp/ychiho/advertisement.html

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2010年03月01日

手探りの中
生温かい場所にたどり着いた
私の巣
初めての巣
人生の生傷は癒え
ほの暗い心の波は静まり
ぎこちなく椅子に座って安穏を享受する
一抹の寂しさにひとり涙をこぼし
太陽の沈んでゆく姿を見ては
明日が今日の延長であることに深く感謝する
飢えもせず 乾きもせず
恐れることなく守られた時を生きる
来るべき試練の第二波を忘れて

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2010年02月26日

孤独の花

寂しさが燃えている
警鐘が鳴り響く
町中が騒ぎ出し灯りが次々と点り出す
夜警たちは人々の合間を縫い
なめるように燃える火の手に向かう
青いのだ
青い炎が花咲いている
からからと崩れ落ちるレンガのように
私の心はほころびを見せ
町を覆う寂しさに包まれて
泣いている
誰も気がつかない
火の元はここにあるのに
寂しさが音を立てて燃えていているのに
ふらふらと裸足でさまよう私に気づかず
火の手を追って行ってしまう
崩れ落ちる
レンガの町の路地の上で
孤独の花がひっそりと咲く

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2010年01月20日

奴隷

何のために生きているのだろうと
地団太を踏んだ
いったい何をしているのだろうと
固い土を蹴った
この病気は治るのか
希望の光は見えない
うねる細い道を歩く 
うつむき
足を引きずりながら
ああ 私は歩かねばならぬ
のろのろと歩かねばならぬ
まるで売られた奴隷のようだ
病が私を縛り上げ早く歩けと背中を蹴る
歩くのだ
歩くのだ
どこまでも
灼熱の太陽の下
ひとり売られた奴隷のように

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2010年01月19日

ひとつの星が瞬いて
ゆっくりゆっくり息をしている
遠くで星はまさに今
いのちのときを迎えている
あの人の時代
この人の時代
皆ひとりひとり時代をつくる
あなたも無二の人生を経て
こうして安らかに呼吸する
星よ
瞬く星よ
明滅するあなたを想い
眠れぬ日々を過ごしています
会いに行くにはあまりに遠い
だからここから祈っています
あなたの呼吸が穏やかであるよう
あなたの心が安らかであるよう
星よ

posted by 野々花 at 16:49 | Comment(4) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2010年01月09日

黒犬

瀕死の病人のように
安住を求めて這いずり回る
苦渋に顔を歪めては
生きることにしがみつく

この苦しみはついてくる
一生懸命ついてくる
息をハアハアと荒げて
黒犬が私を追いかける

この犬を捕らえろ
鎖をつけろ
がんじがらめに縛り上げ
私を二度と追わぬよう

誰にも見えぬ黒犬よ
おまえがどこまで追いつめるとも
私は決して屈しない
この苦しみに屈しない

私と運命をともにする
歯を剥き睨む黒犬よ

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2010年01月04日

土足

知らない国のドアを叩く
知らない国のことばを砕く
Excuse me?
土足のことばが輪を壊す

土着の人と物に染みて
きれいにやすらう円のことば
この調和を破る
Excuse me?

王様の顔した異人さんが
英語という名の冠をかぶり
おまえには通じないのかと
強気の姿勢で迫り来る

あなたもわたしも異人さん
この国もあの国も
ひとつひとつ閉じている
せめてそっと添えないか

すみません
あなたのことばがわからなくて

小声でいいんだ
そして靴を脱いで

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2009年12月14日

野の花のように

路傍に咲く野の花のように
ただ在るという人間の価値
地位も名誉も失って
ぬくもりの他に何ももたない
弱きぼくらは争いを止め
寄り添い
慈しみ
ひっそりと温め合う
執着を忘れてただそこに在る
ぼくらの本当の幸福よ

posted by 野々花 at 11:29 | Comment(2) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年12月13日

あの星は君
この星はぼく
悲しみにことばを奪われた
ぼくらは小さく光を放つ
無数の星が輝いている
遠い夜空で音もなく
みな涙を光らせている
いくつの絶望が星になったの
いくつの悲しみが星々をつないだの
ぼくらは暗い宇宙に浮いて
手をつないで星座をつくる
これがぼくらの最後のことば
声なきぼくらは瞬き続ける
最後のことばを失う日まで
posted by 野々花 at 11:21 | Comment(2) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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大地

雨に濡れた大地に横たわる
久しく忘れていた温かな土のぬくもり
耳を押し当て
何人も拒まないあなたの声に耳を澄ます
呼吸している
鼓動している
大地が息づいている
脈打つ地下水が小川へと流れる
いのちを教える母なる大地に
抱かれ やすらい 慰められる
大いなるあなた
すべての人間が回帰する
いのちの根源よ
posted by 野々花 at 09:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年12月11日

世界不穏

ぼくはまだ忘れない
五月の内乱の少女の死を

つつじが満開に咲き
花びらがひらひらと舞う
いのちが塵よりも軽い世界で
暴力と
消えてゆくいのちを
ぼくは見ていた
貧困の末
正義とうたいながら
からだに爆弾を仕掛け
黒髪の少女は砕け散った
釘とともに飛び散った肉体は
あの内乱の国のつつじだった

ぼくは決して忘れない
そして見届ける
悲劇に結末があるならば

posted by 野々花 at 17:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年12月10日

試練

寂光の季節
もぐらのように生息する
ぼくらは冬の時代を生きている
耐える日々は続き
忍ぶことに慣れても
悲しみは隠し切れない
ぼくらの明日はいつ来るの
光を得る日を信じ
悲しみに暮れる日々が
いつか日の目をみるように
ぼくらはここにいるよ
土の下で待っているよ
ぼくらの涙が地下水となり
春の小川に流れるまで
試練の意味を考える
ぼくらは見ている
透き通った心で
光照るきらきらとした
未来を―

posted by 野々花 at 19:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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独り道

ぼくは戦いに負けた
負けたまま横になる
ぼくは負け犬のようには吠えない
勝ち抜いていった人間を仰ぎもせず
負けた者たちと手を取り合いもしない

誰にも量られない幸福をこの手で紡ぐ
誰にも似ていない幸せのかたち
誰とも競わず
ぼくはぼくだけの道をゆく
寂しくはないこのほの暗い孤独

誰も通らぬ道
この道は険しい
だが気がつけば皆ひとり
戦っていたあの人も
群れを離れていた

競い合った時代
争っていたように見えたあの頃
実はみな独り道をゆく
老いてゆくほどに独り
最後まで独り

posted by 野々花 at 12:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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競争

この世に産まれ落ちた瞬間から
己の存在を主張し
泣き続けた
ぼくらは耳をつんざくほど叫び
生き残りにすべてをかけた

熾烈な競争のもとで
置いてきぼりにされたぼくら
泣き疲れて倒れたぼくらは
切り捨てられ
振り返る者は誰もいない

ぼくらを蹴落とした者たち
見ぬふりをして目を背けた者たち
明日はおまえたちが踏みつけられるかもしれぬ
争いにうごめく哀れな人間が
今日も踏み台を探している

posted by 野々花 at 12:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年12月07日

隣人

切断された私たち
名前も知らぬ人間が
ひしめき合って生きている
私たちは気配を感じつつ
互いに目を向け合わない
緩やかに結ばれた人間の
無言のつながりは断ち切られた

孤立した私たち
隣人を突き放す冷たい「他人」ということば
無関心と警戒が人の痛みを放置する
薄っぺらな絆が
薄っぺらに結ばれて
いとも簡単に解かれる
誰もが深くかかわることを恐れている

だが本当は求めている
厚き温情で手を取り合う
魂の交流を望んでいる
怖いのだ
私たちは近づき方を知らず
手を差し伸べる術をもたない

群集の中
胸に寂しさを抱く
私たちには隣人がいない

posted by 野々花 at 11:55 | Comment(2) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年12月06日

日陰のぼくら

ぼくらの在り処は土の下
ぼくらは日陰で息をする
痛みに倒れ
置き去りにされ
ひっそりと傷をなめる―
日なたのおまえたちは
ぼくらの存在を知っているか

眩しいライトが戦士を照らす
勝者が地上を闊歩する
ネオンが飾るきらびやかな世界
それは嘘だ
その裏にあるのがぼくらだ
暗闇で光求める幾千の瞳
絶望のふちで上げる幾億の手
巧みに隠されたぼくらの存在を
おまえたちは見たことがあるか

ぼくらは声を上げる
精一杯の叫びを
そして地上に届かぬこの声は
虚しく宙へこだまする

posted by 野々花 at 11:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年12月04日

ハイエナ

熟れたりんごと一緒に
魂が売られている
眼前の私欲をあさる
人間たちの魂だ
ハイエナのごとく
互いの尾を追い旋回する
あさましき餌の争奪に終わりはない
天を仰ぐことを忘れ
野の花を摘むことを忘れ
清らかな小川のせせらぎを忘れた
おまえたちの理想はどこへ行った
おまえたちの夢は―
売られた魂にも気づかず
見えない明日を徘徊する
哀れな人間よ
もう一度空を仰げ

posted by 野々花 at 14:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年12月03日

貧困

時代がすすり泣いている
虚しく消費されてゆくことば
安く売られてゆく涙
いのちは塵のように軽く
誇りはどこかへ消え失せた
生も死も
その意味は深く語られることなく
ぼくらはまるで機械仕掛けの人形のようだ
ぼくらを空洞にしたものは何か
ぼくらを貧困にしたものは何か
人間が泣いている
心が泣いている
浅薄になったぼくらの時代が
雨雲のように陰っている

posted by 野々花 at 08:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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2009年12月02日

再生

すべてが崩れ落ちたあの日から
ぼくは再び生きる道を探った
一度死にかけたぼくは
生きることを二度学ぶ
そろりそろりと歩いては
弱い雨風に怯え震え
優しい光を受けて
安堵のため息をつく
ぼくはそんなにも弱かった
崩れ落ちた何もかもを
もう一度信じることから始めた
いのちは生かされた 
この運命には逆らえぬ
ぼくの再生への道のりは
傷が癒えるのに似て
ゆっくりと音もなく作られていった

初冬の柔らかな光に包まれ
今ここに在る
振り返るあの崩壊の日が温かい

posted by 野々花 at 12:51 | Comment(2) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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